一酒一会

幻の泡盛

今は焼酎ブームである。街を歩くと"焼酎揃ってます"というような店構えの飲食店が多くなったこと。ワインバーの次は焼酎屋ですか? ということはほとんどの店もワインバーと同じ運命を・・・。飲食店の経営は本当に大変ですね。日本人はブームが好きだから。

しかし、このブームで焼酎の流通体制が整ったのはいい傾向だと思う。入手可能な種類も増えたし、日本の蒸留酒として一般的に定着するだろう。日本を代表する蒸留酒がウィスキーというのもどうかと思うし。

このブームにより、泡盛も内地でよく流通するようになった。その気になれば全種類を揃えることもできる。
私は泡盛も好きだ。年に1〜2回、石垣島の川平を訪れ、民宿のおやじと川平で作られている泡盛"於茂登"をいっしょに飲むのを楽しみにしている。ところが最近、近所(奈良)のディスカウントチェーンの酒屋でこの泡盛が売られているのを見たときは驚いた。

しかし泡盛はほとんど内地では飲まない。泡盛に限らず、お酒は現地で飲むのが一番おいしいと思う。飲んでる酒は同じなんだけど、そこの食べ物や水、空気と合うのだろう。オリオンビールも沖縄で飲むといいけど、持って帰ってきて飲んでもおいしくないし。
唯一、沖縄以外で泡盛を飲む場所が大阪・心斎橋の沖縄料理屋だけである。ここは石垣島の泡盛が全て揃っているのと、ご主人が八重山好きで毎年2〜3回は八重山へ行く。だから八重山のにおいのする店なのだ。

その泡盛に以前から"幻"と呼ばれるのがある。波照間島で作られる"泡波"だ。元々小さい島で島民が飲む分しか生産能力がないのに日本で最南西端の酒造所ということで変に有名になったので値が上がり、東京では3合瓶が1万ぐらい、1升瓶が3万ぐらいで売られている。現地価格では3合瓶が千円もしないのに・・・。
私はこの泡波の3合瓶を数年前に、石垣の定宿にしている民宿のおかーさんからおみやげに頂いた。民宿のおやじは、
「ぜんぜんうまくないさー。"於茂登"のほうがよっぽどうまいさー。」
と言っていた。石垣で知合ったダイバー仲間の集まりに持っていってみんなで飲んだが全員が、
「・・・於茂登のほうがええ・・・」
こんな酒を大枚はたいて買うやつの気が知れんと。

そんな話を沖縄料理屋のご主人にすると、「泡盛は思い入れの酒」と言った。地元のいろいろなことを知って初めてわかるうまさがある。だから波照間島を知らない人間がいくら貴重だからといって泡波を飲んでもおいしく感じるはずはないと。

確かにその通りだと思う。私が"於茂登"を飲むときには、美しい川平湾の景色と水中に舞うマンタ、民宿のおやじのシーサーのような顔。次々と現れては酒をおいしくしてくれる。

もし、高い金を出して"泡波"を購入しようと思っているのなら、その金で波照間島に行ったらどうだろうか。バーゲンフェアを利用すればその酒代で十分航空券は買える。そして、帰ってきてから飲む機会があれば、島の風景が更に酒をおいしくしてくれるだろう。

Slainte!

( Mar 2004 )

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